2009/07/19

稽古4日目、揺さぶられる




オープニングから順に、
役者の動きや舞台美術を決めながら
若い俳優の演技を中心に改善しつつ、進めています。
かなり手際良く進行するので、
早くもⅠ部の第1幕は終わりに近付いています。

この完璧な稽古を支えているのは、
優秀なスタッフの努力です。
毎晩10時まで劇場に残り
「蜷川さんはこんな風に稽古を進めるだろう」と、
スタッフであれこれ翌日のシミュレーションをしているそうです。

美術スタッフは、蜷川さんのつぶやきをも逃しません。
昨日「カーテンの「シャーッ」って音がうるさいね」と
ひとこと言っただけで、もう次の日には音の少ないものに変わっています。
「ハンモックを置くため舞台の幅を広げて欲しい」と蜷川さん。
その場で美術スタッフは「その時だけ台を追加してはどうか」という意見でした。
しかし、次の日には舞台が広がっているのです!
少しの妥協も許さない、素晴らしいスタッフワークです。

「10分休憩」「今日はここで終わり」という声が、
美術スタッフの「よーいスタート」にあたります。

次のシーンの用意や役者の衣装替え、
本日の問題点の改善へと
一斉に動き出します。


演出部スタッフは役者とも深く関わります。
若い役者の自主練には必ず付き添い、
蜷川さんの意図を理解した上で
アドバイスとエールを送ります。

役者さんにとって、かなり心の支えになっているのではないでしょうか。


といっても、元から器量のよい人間だけが
集まったわけではないと思うのです。
これは蜷川さんの「教育」の賜物でもあると思います。

スタッフの一人が腰を曲げて舞台模型を眺めているところ、
蜷川さんが後ろを通り過ぎざまにポン、っと腰を押しました。
そんなさりげない姿勢ですら観察しているのですから、
スタッフになって始めの方は、徹底的に教育されているのだろうなあと思います。

また、絶対的な信頼関係。
スタッフは言うまでもなく演出家を尊敬し信頼しています。
そして演出家はスタッフの働きっぷりをよく褒めるし、
敬って差し入れもします。
強い絆です。
皆が関わっていることに誇りを持てる現場です。


4日間絶える事のなかった、
若い女優への「語尾」「強調」の注意について、
今日新たに明らかになった事があります。
何度も口をすっぱくして繰り返していたのにはわけがあります。

若者がよくやる
「・・・で、」「・・・は、」といった
接続部分を無意味にのばしたり強調させたりする話し方は、
「今の若者」特有の口調であって、
「普遍的」なものではない。
蜷川さんは「普遍的」な舞台を目指しています。
だからそういった、世代を限定するような流行りものの言葉を
舞台に持ち込まないでほしい、ということでした。

この説明を聞いて、役者はかなり焦ったのではないでしょうか。
単に若者口調を嫌ってダメ出しをしているわけではなかったのです。
自分達にとって悪気のない口調の癖が、
蜷川さんの表現の信念を汚していることになっていたのですから・・。



池内博之さん。
彼の長台詞に、稽古場の皆が硬直しました。
すご過ぎてです!
私は涙を流し拍手をする寸前でした。
初めての立ち稽古であのクオリティー、
あの読解力、あの表現力、あの。。
すでに戯曲の台詞は、池内さんの体内を何周もしています。
もうすっかり、池内さんの言葉です。

蜷川さんもついつい何度も褒めます。
「池内、いいかんじだよ」
「よく勉強したな。もっと高度なところにいくけどな」

池内さんの迫真の演技により、
稽古場が引き締まったのを感じました。
どこまでも高い目標を追っていく意志が
全体に広がった、といいますか。

ああ・・演技ってあんなに素晴らしいものなのですね!
わたしはもう、思い出しただけでグッときます。
今回の稽古を見学させて頂くことは、
なんども言うようですがとても贅沢なことです。
舞台ってやっぱ素敵です。
演劇って心を揺さぶるパワーを持っています。



演出家、本日の名言。

『何かモノを考えるとき、僕はミニチュアに物事を考える』

→哲学者の役の演技指導の時に出たことば。
 俳優が今ある自分を信じ過ぎて、伸びやかに台詞を喋っていました。
 それに対して、「何かを作る者」「生み出す者」の視点は
 そんなにのびのびしていない、と。

なかなか一般の人の口から出てくる言葉ではないと思います。
蜷川さんは改めて怖い(凄い)お人だな、と思いました。


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